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秋山 太郎 (船橋整形外科病院)
高橋 憲正 (船橋整形外科病院)
松木 圭介 (船橋整形外科病院)
佐々木 裕 (船橋整形外科病院)
菅谷 啓之 (東京スポーツ&整形外科クリニック)
渡海 守人 (東京スポーツ&整形外科クリニック)
橋本 瑛子 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
落合 信靖 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
大鳥 精司 (千葉大学 整形外科)
【背景】肩甲下筋腱(SSC)断裂を伴う腱板断裂は多く、見逃されると難治性の肩前方痛の原因となりうるため正確な診断が必要である。これまでSSC断裂に対する様々な徒手検査が報告されているが、いずれの検査も感度が低いのが問題である。われわれは、SSC断裂と密接に関わる上腕二頭筋長頭腱(LHB)障害に対する疼痛誘発検査がSSC断裂を感度よく予測することができるのではないかと考えた。本研究の目的は、LHBへの疼痛誘発検査のSSC断裂診断能を、従来のSSC断裂に対する徒手検査と比較することである。【方法】2021年8月から2022年10月に、2人の肩関節外科専門の上級医により鏡視下腱板修復術が施行された症例を対象とした。術前に執刀医がLHB疼痛誘発検査としてO’Brien test、結節間孔の圧痛、Speed testを、また従来のSSC断裂に対する徒手検査としてNapoleon test、Bearhug test、およびLift off testを行った。SSC断裂の診断は術中に術者が行い、その結果から各検査のSSC断裂診断に対する感度・特異度を求めた。また、2人の肩関節外科フェローのうちの1人が術前に各検査を実施し、検者間信頼性をκ値にて評価した。【結果】本研究対象は100肩で、男性50肩、女性50肩、平均年齢65歳(36-83歳)であった。SSC断裂は57肩に認められた。各検査の感度・特異度は以下の通りである. O’Brien test 58%, 33%; 結節間溝の圧痛 68%, 37%; Speed test 72%, 33%; Napoleon test 39%, 70%; Bearhug test 39%, 63%; Lift off test 37%, 72%。また検者間信頼性はそれぞれ052, 0.46, 0.44, 0.50, 0.48, 0.34であった。【結論】LHBに対する疼痛誘発検査は従来のSSC断裂に対する徒手検査と比較して高感度を示した一方で、特異度は劣っていた。検者間信頼性は全ての検査で中等度であった。LHBに対する疼痛誘発検査を併用することで、術前のSSC断裂診断精度が向上する可能性が示唆された。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.