戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

シンポジウム7    
腱板断裂の診断と保存療法の限界
July 16 th 08:30 - 10:00

Title

Author

川井 誉清 (松戸整形外科病院リハビリテーションセンター)
中嶋 良介 (松戸整形外科病院リハビリテーションセンター)
中嶋 芳乃 (松戸整形外科病院リハビリテーションセンター)
原 素木 (松戸整形外科病院リハビリテーションセンター)
水飼 優宏 (松戸整形外科病院リハビリテーションセンター)
石井 壮郎 (松戸整形外科病院 肩関節センターMD)
荻野 修平 (松戸整形外科病院 肩関節センターMD)
石毛 徳之 (松戸整形外科病院 肩関節センターMD)

Abstract

 理学療法士は腱板断裂の保存療法を展開する際、構造的問題を理解した上で、症状を誘発している機能的問題の改善を目的にアプローチを行う。機能的問題は痛み、関節可動域(ROM)障害、筋機能障害が挙げられ総合的に判断する。患者は痛みを主訴に来院することが多く、安静時痛がある場合は炎症期である可能性が高い。そのため、運動療法よりも局所の安静とADL指導が大切である。痛みは誘発される動作や疼痛部位について評価を行い、再現性や被刺激性を元に評価を実施する。また夜間痛による睡眠障害や反復動作が多い上肢の活動は痛み刺激が助長されるため中枢性感作症候群の影響も考慮する必要がある。
 ROM障害は拘縮タイプと不安定性タイプに分かれる。拘縮タイプは構造的要因(肩峰形態、骨棘発生、滑膜増殖など)と機能的要因(各靭帯・関節包の短縮、腱板機能低下など)により肩峰下インピンジメントが生じることで症状が誘発される。筋スパズムか筋短縮の違いを考慮し、徒手療法や運動療法を実施する。また、上腕骨頭の上昇を抑えるための代償動作として上腕二頭筋長頭への負荷が増大し、前方組織の痛みの訴えを多く経験する。不安定性タイプは自動運動と他動運動のLagが生じている場合である。上肢の空間保持が困難な場合は重力を除いた肢位で関節包の緊張が高くなる挙上位からの運動を行い、求心位を保持した挙上位から徐々に角度を変化させ、肩甲骨周囲筋や残存腱板筋群の筋活動を高めるように実施する。
 筋機能障害は筋萎縮、断裂サイズ、脂肪変性を評価し、肩甲骨固定の有無で筋出力の改善を認める場合は肩甲骨・体幹からのアプローチで改善を認めることが多い。しかし、固定の有無に影響を受けない場合は筋力改善が困難となることを臨床上、経験する。
 長期的予後として断裂部位の自然治癒は望めないため、断裂サイズは徐々に拡大する可能性があることを理解し、患者のニーズに合わせた対応が求められる。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.