戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

シンポジウム7    
腱板断裂の診断と保存療法の限界
July 16 th 08:30 - 10:00

Title

Author

永澤 雷太 (ながさわ整形外科)

Abstract

「先生、私の腱板断裂は手術した方がいいですか?」「今、〇〇さんは肩痛いの?」「いや痛くないよ」「じゃあ手術はいらないよ」「でも、治ることはないんでしょ??」毎日のように繰り返される外来の一場面である。腱板断裂の治療には考慮し選択すべき要素が多すぎる。骨折なら手術する、しないの二択。癌なら多くは手術を選択するだろう。「あの時の夜間痛は辛かったけど、注射をしたら今は痛くない」「手術をした方がいいとは思ってはいるけど2か月も休めばクビになる」「毎日痛くてすぐにでも手術をしたいけど親の介護があるから無理」「自然治癒はしない」「時間経過で断裂は必ず大きくなる」「断裂が大きくなると治療成績も下がるし、術式も変わる(腱板修復→リバース型人工関節置換)かもしれない」非常にマルチファクターなのである。そこが難しい。だから面白いのかも知れない。基本の何点かを理解してもらい、患者の最優先事項は何かを相談しながら、それに伴う負の要素も納得してもらう。『オーダーメイド』の治療方針を立てるしかない。医師の実力も大事だ。内服薬の選択や注射の内容や量の選択、正確に薬液が然るべき部位に入っているか。手術になった場合はなおさらだ。大きくなった断裂を治せるか(早くやった方がよかったか)、関節鏡の技術は備わっているのか、人工関節やその他のオプションの用意はあるか。更に、再断裂した時の技術的な対処と精神的、人間的対応はとれるか。当院は1日100人程の外来患者の半分以上が肩の患者で、その半分は腱板関連。手術のほとんどは腱板断裂で今まで3000例以上の手術を行ったが、日々悩みながら診療している。演者も夜間痛のなくなった腱板断裂患者であり、「先生もそうなのか(笑)」と患者と話が弾むときがある。今までの経験を元にオーダーメイド治療の話をしたい。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.