戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

スポンサード菜の花セミナー    
痛みにひそむ骨系統疾患
July 16 th 13:30 - 14:30

共催

アレクシオンファーマ合同会社メディカルアフェアーズ本部/協和キリン株式会社メディカルアフェアーズ部

Title

Author

写真提供なし
村田 博昭 (パナソニック健康保険組合 松下記念病院)

Abstract

【目的】低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia:HPP)は、ALPL遺伝子が変異し組織非特異的アルカリホスファターゼの活性が低下し、骨の石灰化障害、関節や筋肉への疼痛が生じるまれな遺伝性疾患である。本セミナーでは骨粗鬆症治療中に大腿部痛を生じ当院へ紹介受診後、最終的にHPPの診断に至った成人期発見症例を提示しながらHPPの臨床症状、検査所見などの特徴を解説する。
【症例】60代、女性。骨粗鬆症と診断されロモソズマブの治療を開始後、投与6回目に右大腿近位部の痛みが増強した。画像上右大腿骨の異常所見を認めたため当院へ紹介された。非定型大腿骨骨折が疑われたがロモソズマブ投与以前に骨粗鬆症治療歴はなかった。骨シンチグラムで多数の異常集積像を認め、血液検査ではALPの低値を認めた。HPPを疑い遺伝学的検査を施行するとALPL遺伝子の変異が判明し、HPPと診断した。骨以外の本疾患の関連する特徴的な症状として乳歯や永久歯の早期脱落、長期間にわたる多発部位での疼痛、立ち上がりにくさなどの動作制限の継続があった。
【考察】HPPは主に小児期に発見されることが多いが、成人期になってから発見されることもある。海外では骨折を契機に診断されることが多いが、本邦では報告が少なく、この疾患が認知されていないのが原因とも考えられている。骨粗鬆症や関節リウマチなどの患者で繰り返す骨折、持続する疼痛などの症状がある場合、HPP症例が隠れている可能性がある。HPPの診断にはまずALP低値の確認が必要となるが、日常診療ではALP低値はあまり気に留めずに流されていることが多い。骨粗鬆症や関節リウマチなど血液検査を施行した際にはALP値をチェックし、HPPを見逃さないことが重要である。
【結論】骨折や疼痛などADL障害が強い症例では鑑別診断としてHPPを念頭に置いて、ALP値を確認しておく必要がある。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.