戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

一般演題5    
手関節・肘関節
July 16 th 10:40 - 11:20

Title

Author

写真提供なし
長沢 謙次 (ながさわ整形外科)

Abstract

【目的】手指の腱鞘炎は日常診療で頻繁にみられる疾患である。ステロイドの腱鞘内注入療法は有効な治療法であるが、多数回の実施は腱断裂のリスクを高めると広く認識されている。当院で長年同療法を継続した2例から、その認識の妥当性を考察する。〈br〉【対象と方法】1999年から2023年1月まで両手5指とドゥケルバン腱鞘炎で受診したHAさん(61才男性)に行った延べ176回の腱鞘内注入、2006年から2023年2月まで右手5指と左手4指の腱鞘炎で受診したTAさん(72才男性)に行った延べ119回の腱鞘内注入の経過を提示する。概ね2009年まではデキサメサゾン1.65mgを、2010年以降はトリアムシノロンアセトニド8mg を1%プロカイン0.75mlとともに各指に腱鞘内注入した。同一診療で複数指に注入する場合には前記の薬量を各指に適応している。〈br〉【結果】HAさんでは各指12~22回の注入で順次腱鞘炎は治癒している。TAさんでは右中指の腱鞘炎は治癒したと思われるが、両側母指、両側示指、左中指、右環指、両側小指の腱鞘炎は断続的に再発を繰り返している。HAさんでは24年、TAさんでは17年の治療経過で腱断裂は発生していない。〈br〉【考察】当院でも腱鞘炎に対する腱鞘内注入療法で3度の再発を見た時点で手術を勧めているが、強制はしていない。この2名以外にも数年来複数指に腱鞘内注入を繰り返している男性患者が数名おり、また女性でも数回同手指に腱鞘内注入を行った症例はかなりの人数いるが例数は正確には記憶していない。男女とも腱断裂の発生は1例もない。〈br〉【結果】多くの整形外科医が腱鞘炎に対する複数回のステロイドの腱鞘内注入は腱断裂を発症するリスクがあると認識しているが、少なくとも男性の手指腱鞘炎患者では、そのようなリスクは極めて低いと判断している。もし断裂を発生したとすれば、手技上での問題がある可能性が高いのではないかと推察する。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.