Chair)
康之 青柳
(稲毛整形外科クリニック)
【目的】ばね指に対する腱鞘切開術の手術成績から問題点やその対策を検討した。
【対象と方法】過去7年間に腱鞘切開術を行い成績を確認しえた213例276指(男性71例、女性142例、平均年齢64歳)を対象とした。成績評価は術後平均2.3か月で行い、疼痛や可動域制限などの愁訴残存例にはトリアムシノロン(TA)腱鞘内注射を追加した。最終成績は術後平均4.4か月で評価した。検討項目は指別、術前のTA注射回数、重症度、術中に認められた屈筋腱の変性の有無、糖尿病の有無による手術成績、術後の愁訴残存例に対する追加注射の効果とした。
【結果】276指中161指は手術のみで治癒した。術後愁訴の残存した115指にはTA腱鞘内注射を追加して成績は有意に改善し、最終的に263指が治癒したが13指には愁訴が残存し、原因はPIP関節やMP関節の可動域制限であった。示指・中指・環指・小指は母指と比べて愁訴を残すものが有意に多く、術前にTA注射を行っても再発したものは注射を行っていないものと比べて愁訴を残すものが有意に多く、屈筋腱に変性所見を認めるものは愁訴を残すものが有意に多かった。術前から可動域制限を認める重症例や糖尿病例でも愁訴を残すものが多かったが有意ではなかった。
【考察】母指以外の屈筋腱が2本ある指、TA腱鞘内注射を行なっても再発して手術になったもの、腱に変性を認めるもの、術前からの可動域制限、糖尿病例では術後愁訴が残存する傾向にあるが、腱鞘内注射で有意に改善するので、術後愁訴の原因としては腱の滑走障害や滑膜炎の遷延などの腱鞘炎の難治化が主たる原因と考えられた。それらが持続するものでは関節拘縮に至っていた。
【結論】ばね指手術でも術後愁訴が残存する場合がある。その多くは腱鞘炎の難治化によるものであり、愁訴残存例に対する腱鞘内注射の追加はサルベージとして有効であり、関節拘縮が固定する前に、ステロイド注射の弊害に注意しつつも考慮されて良い手段である。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.