Chair)
康之 青柳
(稲毛整形外科クリニック)
脇田 浩正 (東千葉メディカルセンター)
松浦 佑介 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
【背景】全身性アミロイドーシス患者の初発症状として手根管症候群を呈することがわかってきた。そのため、特発性手根管症候群患者の手術時に検体を病理検査に提出し、アミロイドの有無を検索する取り組みがなされるようになってきた。ただし、報告されている術中検体におけるアミロイド陽性率は2.3~34%とばらつきが大きい。提出する術中検体の種類により、アミロイド陽性率が違うのかを調査した。【方法】2020年1月から2021年10月31日にかけて県内の大学病院、 県内地域中核病院2つの合計3病院で手根管開放術が行われた特発性手根管症候群患者70例を対象とした。男性22例、女性48例、平均年齢は70.0歳であった。手術中に屈筋支帯か屈筋腱滑膜のどちらかの一部を病理検査に提出した。どちらを提出するかは術者の裁量により決定した。横手根靭帯と屈筋腱滑膜の検体でアミロイド陽性率の差があるかを調査した。【結果】屈筋支帯群36例と屈筋腱滑膜群34例で性別、年齢に有意差はなかった。屈筋支帯群で陽性者は22例(61.1%)、屈筋腱滑膜群で陽性者5例(14.7%)と有意に屈筋支帯群で陽性率が高かった。 【考察】生検部位によるアミロイド検出率の違いに関しての報告は散見されているが、手根管症候群に限定した支帯と滑膜との差に関しての報告はない。今回、屈筋支帯群で有意に陽性率が高い結果となったが、ATTRアミロイドーシスにおいて腱・靭帯組織に高率にアミロイドを認める報告もあり、感度がより高い可能性がある。その一方で、アミロイドを検出する際の染色法によっては膠原線維との鑑別が難しいこともあり、屈筋支帯検体のほうが偽陽性が高くなっている可能性も考えられた。【結論】特発性手根管症候群手術時検体としては屈筋支帯のほうが屈筋腱滑膜よりもアミロイド陽性率が高かった。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.