JCOA医療システム委員会ではJCOA会員を対象に、所属する医療機関を受診した患者が受けた医業類似行為による健康被害および柔道整復師による非外傷性疾患に対する施術に関する実態調査を実施している。調査項目は1.医業類似行為者の職種、保険証使用の有無2.施術による事故や症状の悪化例3.柔道整復師による非外傷性疾患に対する施術例(健康被害発生の有無には関係なし)4.不適切な施術症例5.骨折等の見逃し、である。平成29年1月1日から令和4年12月31日までの6年間で135医療機関から1271例の報告があった。職種としては柔整師が1090例と最も多く、施術による骨折事故43例や症状の悪化253例が報告された。柔整師による非外傷性疾患に対する施術は1271例中934例(73.5%)と多数を占めた。特に脊椎疾患609例、変形性膝関節症87例、肩関節周囲炎76例などが多く報告された。ばね指に対し過度のマニピュレーションを実施し、症状を悪化させた例や、肩関節脱臼、アキレス腱断裂にマッサージを継続するなどの不適切な施術例143例、骨折の見逃し110例、骨折以外の見逃しも15例あり、この中には悪性腫瘍などの重篤な疾患も含まれていた。施術による事故、症状悪化例は、柔整師が非外傷性疾患に施術した際に最も多く認められた。柔整師が業務範囲外である非外傷性疾患にまで施術していることが大きな要因として考えられる。また、正しい診断をしていない慢性疾患への施術は、見逃されてしまう疾病があり大変危険である。今回の医業類似行為に係る健康被害報告数は氷山の一角に過ぎない。健康被害を防ぐためには、接骨院での施術範囲をJCOA会員以外の整形外科医や他科の医師、医療従事者、また一般の方にも理解してもらう必要がある。これらを踏まえて医療システム委員会のこれまでの取り組みについて紹介し、今後の活動について考察する。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.