戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

菜の花セミナー5    
慢性疼痛に対するアプローチ
July 17 th 10:40 - 11:40

Chair

Chair) 奈津子 田口
(千葉大学大学院医学研究院 麻酔科学)
Chair) 中塚 映政
(なかつか整形外科リハビリクリニック)

Title

Author

清水 啓介 (千葉大学 未来医療教育研究機構)
稲毛 一秀 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
折田 純久 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
志賀 康浩 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
江口 和 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学)
竹生 浩人 (千葉大学大学院医学研究院整形外科学, 千葉大学大学院医学研究院麻酔科学)
大鳥 精司 (千葉大学 整形外科)

Abstract

非特異的慢性疼痛には器質的要因のみならず心理社会的要因の関与が示唆されており,通常の整形外科的治療に加えて認知行動療法(以下CBT)が推奨されているが,CBTの適用ガイドラインは存在しない.結果,本来治療が適さない患者のスクリーニングができず,治療効果が低いことが問題となっている.今後CBTを行う上で患者側の治療阻害要因を明確とする必要があるが,先行研究ではCBTの治療促進因子の検討にとどまり,CBTに全く反応を示さなかった患者の考察がなされていない.そこで,我々研究グループではCBTの治療効果を阻害する患者側の因子について検討した.結果,不応群の固有因子として,言語化できない強い不安感が生じていること,親密な関係への欲求が非常に強く医療依存の傾向が強いこと,言語性IQが低いこと,ADHD傾向,感情的な価値判断をする傾向が存在することが分かり,客観的に痛みを表現したり意味づけたりする能力の低さが示唆された.また,簡易脳波計を活用したα波のニューロフィードバックトレーニング(以下NFT)の介入試験においてはNFTを併用した群において治療効果のeffect sizeが大きいことが分かり,更に慢性化後1年以内の早期にCBTを開始することが重要であるといえた.NFT実施前後でα波の上昇を全く認めない群が存在し,本群においてはCBTも一切無効であるケースが多く,ROC解析を実施したところ,上昇率42%未満の患者においてはCBT不応である可能性が高い(感度.75,特異度.84) といえた。つまりNFTで脳の状態をコントロールできる人はCBTでも思考や行動をコントロールできる,ということである.本研究成果については特許申請中である.
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.