戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

シンポジウム9    
骨粗鬆症性椎体骨折の治療戦略
July 17 th 13:10 - 14:40

Title

Author

写真提供なし
高橋 真治 (大阪公立大学 整形外科)

Abstract

【目的】高齢化とともに骨粗鬆症椎体骨折(OVF)の医療費の増加も見込まれる。OVFの外科的治療に関しては、Balloon kyphoplasty(BKP)の費用対効果はいくつか報告があるが、治療による恩恵は介護者にも及ぶが十分な評価がなされていない現状がある。そこで、本シンポジウムではOVFにおける医療経済の状況について基本的な事項から介護負担を含めたものまで我々の研究成果を踏まえて解説する。【対象と方法】OVF後のADL分布は、新規にOVFを発症した受傷後2ヵ月以内の65歳以上の者を対象としてBKPあるいは保存治療を実施した6ヵ月間の多施設前向き研究のデータを使用した。また、シミュレーションモデルにより介護による影響も調査した。【結果】介護費用は、治療実施6ヵ月後時点のADL分布と要介護度と日常生活自立度の分布を基に算出した。治療実施6ヵ月後時点の要介護度別の1人あたり介護費は、BKP群39,497円/月、保存療法群58,298円/月、差分18,801円/月であった。インフォーマルケア費用の比較として、治療実施6ヵ月後時点の要介護度別の1人あたりインフォーマルケア費用は、BKP群で35,722円/月、保存療法群で44,102円/月、差分は8,380円/月であった。推計の結果、BKP実施によって発生する追加的費用(402,988円)は、20.4ヵ月目(1.7年目)において介護費用によって相殺される可能性が示唆された。【考察】我々が本邦で実施した研究では、遷延治癒のハイリスク群に対するBKPの費用対効果は許容範囲内であった。治療の費用対効果をより適切にするためには、適切な患者選択・治療選択が重要である。また、高齢者の運動器疾患の治療は患者本人の生活の質を高めるだけでなく、介護者・介助者の負担軽減や時間損失の軽減にもつながりうる。【結論】BKPは費用対効果的に許容範囲内であった。介護費のみではなく介助者の負担軽減にもつながる可能性がある。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.