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中嶋 良介 (松戸整形外科病院 リハビリテーションセンター)
川井 誉清 (松戸整形外科病院 リハビリテーションセンター)
石井 壮郎 (松戸整形外科病院 肩関節センター)
荻野 修平 (松戸整形外科病院 肩関節センター)
石毛 徳之 (松戸整形外科病院 肩関節センター)
【目的】
肩腱板断裂は肩関節痛を生じる代表的な疾患である。近年、運動器疾患の症状を持続、悪化させる要因として中枢性感作が注目されている。そこで、本研究の目的は中枢性感作を有する腱板断裂患者の特徴について明らかにすることとした。
【対象と方法】
対象は当院にて2021年4月より2022年10月までに肩関節専門医がMRIにて腱板断裂と診断した181例181肩とした。方法は基本属性として年齢、性別、術側、外傷有無、糖尿病有無、夜間痛有無、罹病期間を調査し、可動域(屈曲、外転、外旋、結帯)を測定した。中枢性感作の評価は短縮版Central Sensitization Inventoryを用い、先行研究に準じ、20点以上を中枢性感作症状ありとした。統計学的検討は2群間比較をマン・ホイットニーU検定、およびカイ二乗検定にて行い、中枢性感作の有無を従属変数とし、有意差を認めた項目を独立変数としロジスティック回帰分析を行った。有意水準5%とした。
【結果】
181肩中29肩(16%)に中枢性感作を認めた。2群間比較では屈曲、外転、性別、夜間痛で有意差を認め、ロジスティック回帰分析より、夜間痛のみが抽出され、オッズ比3.77(95%信頼区間1.58-8.21)であった。
【考察】
中枢性感作は中枢系における痛覚過敏を誘発する神経信号の拡大と定義され、慢性疼痛に関与している。Bryanは腱板断裂患者の多くは夜間痛により睡眠障害に陥っているが、断裂サイズや腱の引き込み等の形態的特徴とは相関がないと報告している。また、西上は中枢性感作の要素が強い疼痛患者に対する介入は運動療法だけでは不十分としている。そのため、夜間痛を有する腱板断裂患者においては中枢性感作が背景にある可能性を考慮し、患者教育を併用しながら運動療法を実施する必要があると考える。
【結論】
腱板断裂患者では16%に中枢性感作を認め、夜間痛との関連を認めた。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.