Chair)
哲治 根本
(おゆみの中央病院整形外科)
秋山 友紀 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
佐藤 祐介 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
佐藤 雅 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
堀井 真人 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
脇田 浩正 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
葉 佐俊 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
佐藤 貴允 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
森川 友貴 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
中川 晃一 (東邦大学医療センター佐倉病院 整形外科)
青木 保親 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
【目的】若年男性の,初診時に腰背部痛のみを主訴として発症した運動後急性腎不全(ALPE)の1例を経験したので報告すること.
【症例】22歳,男性.午前11時頃に300m走を4回行った後から腰背部痛が出現.次第に症状が増悪し午後になると座位保持が困難になるほどとなったため救急要請.当院搬送された.体温は38.3度.両側腰背部に安静時を主とした激しい自発痛あり,腰椎単純X線検査・腰椎単純MRI検査施行されるも異常所見はなかった.非麻薬性鎮痛薬の静注により疼痛は自制範囲内となるも,血液検査で血清クレアチニン値が1.47 mg/dlと高値であり,発症後翌日には1.86 mg/dlと最高値となった.その後は経過観察のみで自然軽快したが,初診時に5.7 mg/dlであった血清尿酸値が発症後2週時に1.5 mg/dlと低値となり,また尿中尿酸排泄率が32.76 %と高値であったため腎性低尿酸血症と診断され,本症例における腰背部痛はALPEであると診断された.その後も経過観察を行い最終観察時まで腰背部痛の再燃はなかった.
【考察】ALPEは無酸素運動後に発症する腰背部痛と腎の血管攣縮を伴う急性腎障害である.若年男性に多く,運動後3-12時間後に強い腰背部痛のほかに悪心,嘔吐を伴うことが多い.本症例において患者の主訴は腰背部痛のみであった.若年男性の腰背部痛患者に対しては病歴を詳細に聴取し,無酸素運動を誘因として腰背部痛が出現している場合にはALPEを鑑別に精査する必要性が示唆される.また,ALPEの23 %で血液透析が必要になると報告されており,リスク因子として腎性低尿酸血症,腰背部痛出現後のNSAID投与が挙げられている.本症例では腎性低尿酸血症を認めたものの初診時から非麻薬性鎮痛薬により鎮痛が行われており,重症化のリスクを軽減した可能性がある.
【結論】若年男性に発症した腎性低尿酸血症によるALPEの1例を経験した.無酸素運動後に発症した若年男性の腰背部痛患者はALPEを考慮する必要がある.
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.