【はじめに】15年前に脛骨外顆骨折に骨接合術を施行した膝関節に、人工膝関節置換術(以下、TKA)施行後、手術創に大きさ約5cm×4cmの皮膚壊死が発生した。この皮膚壊死にデブルドマンと縫縮(以下、創処理)を計9回繰り返し、TKA術後104日で創治癒に導いた。
【症例提示】84歳6か月女性。主訴は左膝関節痛と歩行困難。既往歴は、65歳からの脂質異常症と糖尿病があり加療中であった。また、70歳時当院で左脛骨外顆骨折の骨接合術を施行した。2年前と4年前に関節内血種を認めた。現病歴は、1週間前からの連日の草刈りにて発症した。現症は、左膝関節は内反膝を呈し、内側大腿脛骨関節に圧痛があり、跛行を認めた。レ線所見は、脛骨外顆にはプレート固定がなされ、内側大腿脛骨関節裂隙は消失していた。診断は、脛骨外顆骨折術後の重度変形性膝関節症とし、骨内異物除去術とTKAを計画、初診後36日目に執刀した。手術は、前回の脛骨外側部の皮切を利用し、頭側は膝蓋骨外側から膝蓋骨上方に皮切を追加延長し、「逆くの字」となった。TKAはCR型で術中問題はなかった。術後14日目、「逆くの字」の皮切頂点の内側に約5cm×4cmの表層壊死が出現し、術後20日目には大きさは同じだが、表層壊死50%と全層壊死50%に増悪した。この皮膚壊死を、当初は週2回、最終は2週に1回の頻度で創処理を繰り返した。計9回の創処理施行後、TKA術後104日で創は治癒した。この間リハビリは継続し、可動域、歩行には問題がなかった。
【考察】本例の皮膚壊死は、15年前の手術と、糖尿病性神経症による創部の知覚鈍麻が影響していた。また、創処理は壊死部切除を最小とし、さらなる壊死拡大を回避しつつ、縫縮を少しずつ繰り返し、創治癒に時間をかけた。抗生剤は間欠的に投与し感染はなかった。
【結語】TKA術後の創の皮膚壊死には、リハビリを考慮し、きめ細かい創処理の継続が重要である。
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