Chair)
剛司 山下
(おゆみの中央病院 整形外科)
西田 佳弘 (名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
【目的】SI-613/ONO-5704(ジョイクル関節注:JCL)は、ヒアルロン酸ナトリウムにジクロフェナク(DF)を化学結合したDiclofenac etalhyaluronate(DF-HA)を有効成分とし、膝関節及び股関節の変形性関節症(膝OA及び股OA)を適応とする。2021年3月に製造販売承認を取得したが、臨床試用開始直後からショック、アナフィラキシーの症例が報告されている。本研究では、JCL投与後にアナフィラキシー症状を呈した要因の検討及び要因検討に用いる各種検査の有用性の確認を目的とした。【対象と方法】JCL既治療患者に対する観察研究を行った。対象は20歳以上の膝OA又は股OA患者で、JCL投与後にアナフィラキシー症状を呈した患者(発症)又はアレルギー症状を呈していない患者(非発症)とした。検査は好塩基球活性化試験(BAT)、ELISA又はイムノクロマトキットを用いて測定した特異的IgE抗体検査(ELISA測定又は検査キット測定)、及びジェノタイピングによるゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。【結果】27例(発症/非発症:13例/14例)に検査を実施した。BATでは発症例中7例でDF-HAを含有する検査試薬にて好塩基球の活性化が認められた。添加剤マクロゴールでは好塩基球の活性化は認められなかった。ELISA測定では発症例中4例の血清中にDF特異的IgEが認められた。検査キット測定では発症、非発症例、共に一律した結果は得られず、GWASも明確な結果は得られなかった。【考察】BATの結果から、添加剤マクロゴールではなくDF-HAがアナフィラキシーの発症に関与することが示唆された。また、BATでDF-HAによる好塩基球の活性化が認められた7例中4例で血清中にDF特異的IgEが検出されたことから、DF-HAによるアナフィラキシー発症の一部はDF特異的IgEを介する可能性が示唆された。【結論】JCL投与後のアナフィラキシーへの関与が示唆される要因としてDF-HAの可能性、要因検討に有用と考えられる検査方法としてBAT及びDF特異的IgE ELISAが見出された。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.