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菅野 真彦 (習志野第一病院 整形外科)
三橋 繁 (習志野第一病院 整形外科)
杉岡 佳織 (習志野第一病院 整形外科)
萩原 雅司 (習志野第一病院 整形外科)
鎌田 尊人 (習志野第一病院 整形外科)
木下 知明 (習志野第一病院 整形外科)
中村 伸一郎 (習志野第一病院 整形外科)
三橋 稔 (習志野第一病院 整形外科)
【目的】本邦の高齢化に伴い大腿骨転子部骨折患者の背景は変化しており、超高齢者に対する手術も珍しくない。粉砕を伴う高度の不安定型骨折、また超高齢に伴う高度の骨脆弱性を有する患者も増加しており、髄内釘を用いた骨接合術の治療成績の低下も危惧される。当院でのSynthes社TFNA cement augmentation system(以下セメントTFNA)を用いた治療成績を報告する
【対象と方法】対象は2021年1月から12月までに当院で大腿骨転子部骨折に対してセメントTFNAを用いて骨接合術を施行した33例であり、内訳は男性2例、女性31例である。セメントTFNAの適応は不安定性の高い骨折型、また超高齢等で骨脆弱性が著しく高いと推察される症例とし、その適応は個々の執刀医が判断した。調査項目は性別、年齢、執刀医の日本整形外科学会専門医資格の有無、中野分類を用いた骨折型、手術時間、術後整復位、術後1週のtelescope量、術後1週の整復位損失の有無、Tip apex distance(以下TAD)、骨密度、骨癒合の有無、術前後のADLの変化を調査した。
【結果】平均年齢は87.8歳、33例中10例が施設入所等により骨癒合まで追跡フォローをすることができなかった。追跡し得た23例中、再手術が必要となったのは1例のみであった。その1例では術後経過観察中に髄内型となり、骨頭内反が進行しカットアウトの切迫状態となったため、術後4ヶ月半で人工骨頭への再置換を行なった。
【考察】本研究ではカットアウト、偽関節のリスクが高いと思われる症例に適応を絞っているが、その中でも人工骨頭への最置換が必要となったのは1例のみであり、良好な臨床成績が得られた。しかし、セメントを用いた場合でも髄外型への整復など基本的な整復手技を行う必要があると考えられた。
【結論】当院でのセメントTFNAの臨床成績について報告した。不安定性が高い、高度骨脆弱性を有する症例に有効な治療選択肢の一つとなりうると考えられる。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.