戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

一般演題17    
骨盤・股関節1
July 17 th 09:45 - 10:30

Title

Author

写真提供なし
遠藤 健次 (遠藤整形外科 )

Abstract

【目的】閉鎖孔ヘルニアは稀な疾患であるが股関節痛を初発症状とすることがあり, 腸閉塞に至ると緊急手術が必要となるため, 股関節疾患との鑑別が重要となる. 閉鎖孔ヘルニアは少し痩せた高齢女性に発症することが多く, 典型例ではHowship-Romberg signを認める. 今回, 消化器症状に先行して股関節症状を呈し, 同 signを認めた閉鎖孔ヘルニアの症例を経験したので 臨床経過と画像所見を報告する.  【症例】82歳女性,数ヶ月前から時々軽い右股関節痛が有ったが, その都度軽快していた. 某日, これまで経験したことがない股関節伸展障害を伴った右股関節疼痛が出現したため当院を受診. 初診時発熱無く, 単純X線像では両股関節の軽度の形成不全が見られた. 右股関節は屈曲伸展・内外転・内外旋と全可動域が疼痛のため中等度制限されていた. 可及的早期のMRI撮影をオーダーし2日後に実施. MRIにて右股関節内転筋群のびまん性の浮腫像と脱出した腸管像, およびイレウス像を認めた. 直ちに救急病院を紹介転院, 緊急内視鏡手術(約5cmの小腸切除とヘルニア門の閉鎖)が実施された. 術後経過は良好で約1ヶ月後に当院を受診した際に腹部症状は無かった. 【考察】 閉鎖孔ヘルニアは恥骨筋と内外閉鎖筋との間にある閉鎖孔をヘルニア門として, 主に小腸が閉鎖管内に嵌入する内ヘルニアである. 腸閉塞を起こした状態で診断が遅れると予後不良になるリスクが指摘されている. 腹部症状で発症することが多いが, 本例のように初期には軽い股関節痛にとどまり, ある日突然強い股関節大腿痛で発症する場合があり, 整形外科外来での重要な鑑別疾患との認識が必要である. MRIでは内転筋群のびまん性の浮腫性変化を認めたことから閉鎖孔ヘルニアによる閉鎖神経圧迫に加え ,閉鎖動静脈も圧迫を受けて内転筋群の浮腫性変化を呈した可能性が考えられた.
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.