戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

一般演題19    
脊椎・脊髄疾患1
July 17 th 13:10 - 14:10

Chair

Chair) 洋美 安宅
(松戸整形外科病院 脊椎センター)

Title

Author

佐藤 雅 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
青木 保親 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
井上 雅寛 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
小山 慶太 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
佐藤 祐介 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
堀井 真人 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
脇田 浩正 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
葉 佐俊 (東千葉メディカルセンター 整形外科)
大鳥 精司 (千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)

Abstract

【背景】頚椎化膿性椎間板炎として加療を開始したが,数日後に胸椎から腰椎に及ぶ広範囲の脊髄硬膜外膿瘍の存在が判明した症例を経験したため報告する.
【症例】40代男性.特に誘因なく後頚部痛と両肩甲骨周囲の痛みが出現し近医を受診した.頚椎MRIにて化膿性椎間板炎が疑われ,当院紹介となった.基礎疾患は高血圧のみで,高血糖や免疫不全をきたす疾患を指摘されたことはなかった.頚椎MRIにてC4/5の椎間板,C2から撮像範囲下端のT4に至る脊髄硬膜外,またC2からC5までの椎体前面に膿瘍を疑わせる高信号領域を認めたため,頚椎化膿性脊椎炎と診断し同日緊急で手術を施行した.明らかな上下肢の麻痺所見を認めなかったことから,手術は頚椎前方アプローチによる椎体前面の切開術を施行した.長頚筋を剥離すると白色の膿性滲出を認めた.周囲の十分な洗浄とC4/5椎間板の穿刺洗浄を追加して終了した.術翌日に頚部痛が増強し,新たに腰背部痛が出現し,全脊椎MRIを撮影した.頚椎の硬膜外膿瘍の増大と,胸椎から腰椎に及ぶ脊髄硬膜外膿瘍を認め,初回手術の2日後に各部位の排膿ドレナージ術を施行した.上下肢の明らかな麻痺症状の出現なく,術後約1ヶ月で独歩にて自宅退院した.排尿障害を呈したが術後4ヶ月で改善した.
【考察】比較的稀な脊髄硬膜外膿瘍の中でも,全脊椎に及ぶ広範性脊椎硬膜外膿瘍は稀な疾患である.診断が遅れると致死的になることもあり注意が必要である.後頚部周囲に疼痛が限局していたことから頚椎化膿性脊椎炎と診断したが,初診時の頚椎MRIにて撮像範囲下端まで硬膜外膿瘍が及んでいたことからさらに尾側に膿瘍が存在する可能性を考慮する必要があった.治療は排膿を目的とした椎弓切除術が検討されるが,当院ではskip laminectomyを採用することで良好な術後成績を得ている.
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.