戻る 第36回臨床整形外科学会

抄録

Session

JCOAスポーツ医懇談会 シンポジウム    
成長期スポーツ選手を如何に診る―現場とスポーツ医からのメッセージ―
July 17 th 10:20 - 11:50

Chair

Chair) 哲夫 西川
(西川整形外科リハビリクリニック)
Chair) 大沢 亜紀
(奏の杜整形外科)

Title

Author

中山 修一 (JR東京総合病院 )

Abstract

足関節捻挫は頻繁に遭遇する外傷だが、多くの選手が受傷後も高いパフォーマンスで競技復帰できるために比較的軽視されてきた。しかし、その74%に慢性的な愁訴を残し、70%が再発し、20-40%が慢性不安定症に移行する、と報告されるなど、実は多くの選手が足関節捻挫を受傷した後に不安定感や疼痛などの愁訴を自覚していることが明らかになった。更には骨棘形成や軟骨損傷による症状を呈することもあり、足関節捻挫は今まで考えられていたより深刻な外傷と受け止められている。全国大会レベルの高校生バスケットボール選手1013人からのアンケート調査からは、男性では全体の8割、女性では9割の選手が既に足関節捻挫を経験しており、その7割以上が再発を経験していた。8割の選手は高校入学前に初回の捻挫を経験しており、ピークは14歳であった。また高校生にして彼らの3割は運動時に、2割は安静時にも足に痛みを感じていた。同集団の129人に前距腓靭帯(ATFL)の超音波検査とバランステスト(SEBT)、足関節背屈角度を調査した。多変量解析から、捻挫を繰り返すと、足関節の不安定性(ATFL損傷頻度)と不安定感が増し、一方で、足関節の背屈制限を生じ、バランス能力が低下することがわかった。成長期に生じた足関節背屈制限と不安定性に関連したバランス能力の低下は、プレー姿勢・重心の変化をもたらし、足関節捻挫の再発のみならず、その後に発生のピークを迎える膝関節靭帯損傷や疲労骨折の誘因となる可能性がある。足関節捻挫の予防と治療は決して軽視してはならない。一次予防として、まだ捻挫をしていない子供たちに予防啓発をすること。二次予防として、初回捻挫時にATFLを保護・治療し、足関節背屈制限を残さないよう治療すること。三次予防として、再発捻挫を防ぐよう可動域訓練、バランス訓練、装具療法などを徹底する。以上の三つのそれぞれの集団に対する個別対応が必要である。
I don't have COI relationships whitch should be disclosed.